いまさら聞けない白内障とは
人間は加齢とともに白内障になりやすい。
犬も加齢とともに白内障が出る。
猫はあまり聞かないけどなんで?
白内障って目が白く濁るけどなんで?
これは避けられないの?
ならないためにどうしたらいい?
金井 進さんによる白内障白内障は、目の水晶体が濁ることで視力が低下する疾患です。加齢とともに発症することが多く、人間だけでなく動物にも見られます。
白内障の発症機序(メカニズム)は、水晶体の構造および機能の変化に関わる複数の要因によって引き起こされます。以下に、白内障がどのように発生するのかを詳しく説明します。
Contents
水晶体の構造と役割
水晶体は、目の中で光を屈折させて網膜上に焦点を合わせる透明な構造物です。水晶体は主に水とタンパク質で構成されており、透明性を保つために高度に組織化されています。
白内障の発症機序
白内障は水晶体が濁ることで発生します。その主なメカニズムは以下の通りです:
- タンパク質の変性と凝集
- タンパク質の変性:加齢や紫外線、酸化ストレスなどにより、水晶体のタンパク質が変性します。変性したタンパク質は正常な構造を保てなくなり、透明性を失います。
- タンパク質の凝集:変性したタンパク質が互いに結びつき、凝集体を形成します。これにより、水晶体の透明度が低下し、濁りが生じます。
- 酸化ストレス
- 活性酸素種(ROS):紫外線や代謝過程で発生する活性酸素種が水晶体の細胞にダメージを与えます。これが酸化ストレスを引き起こし、タンパク質や細胞膜を損傷します。
- 抗酸化防御機構の低下:加齢に伴い、抗酸化防御機構(例えば、グルタチオンなど)の効率が低下します。これにより、酸化ストレスによるダメージが蓄積しやすくなります。
- 糖尿病とソルビトール経路
- ソルビトールの蓄積:糖尿病患者では、血糖値が高い状態が続くと、グルコースがソルビトールに変換され、水晶体内に蓄積します。ソルビトールの蓄積は水晶体細胞の浸透圧バランスを崩し、細胞の機能障害を引き起こします。
- 浸透圧の変化:浸透圧の変化により、水晶体が水分を吸収し、膨張して透明性が失われます。
- 遺伝的要因
- 遺伝的変異:特定の遺伝的変異が水晶体の構造タンパク質(クリスタリンなど)の異常を引き起こし、白内障のリスクを高めます。遺伝的要因は若年性白内障の主な原因の一つです。
- 外傷
- 物理的ダメージ:外傷によって水晶体が損傷すると、タンパク質の変性と凝集が促進され、白内障が発生します。外傷性白内障は、打撲や異物の侵入などによって引き起こされます。
加齢に伴う変化
加齢は白内障の最も一般的な原因です。年齢とともに、以下のような変化が水晶体に生じます:
- タンパク質の蓄積と変性
- 老化により、正常なタンパク質の合成と修復が減少し、変性したタンパク質が蓄積しやすくなります。
- 抗酸化物質の減少
- グルタチオンやビタミンCなどの抗酸化物質のレベルが低下し、酸化ストレスに対する防御能力が減少します。
- 細胞膜の変化
- 細胞膜の構造が変化し、透過性が変わることで、細胞内外の物質の移動が妨げられ、細胞の健康が損なわれます。
白内障の症状
白内障の主な症状には以下のものがあります:
- 視力の低下:徐々に視力が低下し、物がぼやけて見えます。
- 例:60歳の男性が、新聞の文字がはっきり見えなくなりました。
- まぶしさ:明るい光や車のヘッドライトがまぶしく感じます。
- 例:夜間の運転中に対向車のヘッドライトが非常にまぶしく感じます。
- 色の見え方の変化:色が薄く見える、または黄色味がかかって見える。
- 例:白い壁が黄色っぽく見えるようになりました。
- 視野のぼやけ:全体的に視野がかすんで見えます。
- 例:風景全体が霧がかかったように見えます。
- 二重視:一つの物が二重に見えることがあります。
- 例:片目で見ても、文字が二重に見えることがあります。
白内障の検査
白内障の診断には、以下のような検査が行われます:
- 視力検査:視力の低下を測定し、白内障の進行度を評価します。
- 例:視力表を使って遠くの文字やシンボルを読む検査。
- 眼底検査:瞳孔を拡張し、眼底(網膜と視神経)を観察します。
- 例:散瞳薬を使い、眼底カメラで内部の状態を詳しく調べます。
- 細隙灯検査:細隙灯顕微鏡を使って水晶体の濁りを直接観察します。
- 例:スリットランプを使い、前房、角膜、水晶体の状態を観察します。
- 眼圧測定:眼圧を測定し、他の眼疾患(緑内障など)を排除します。
- 例:トノメーターを使って眼圧を測定します。
- 視野検査:視野の欠損を確認し、白内障以外の眼疾患の有無を確認します。
- 例:視野計を使って、視野の広がりや欠損を調べます。
白内障の治療
白内障の主な治療法は手術です。手術の方法は以下の通りです:
- 手術前の準備:手術前に詳細な検査を行い、手術の計画を立てます。
- 例:視力検査、眼底検査、眼圧測定など。
- 白内障手術:濁った水晶体を取り除き、人工水晶体(眼内レンズ)を挿入します。
- 超音波乳化吸引術:超音波で水晶体を砕いて吸引し、人工レンズを挿入します。
- 水晶体全摘出術:濁った水晶体を完全に取り除き、人工レンズを挿入します。
- 手術後のケア:手術後は感染予防のために抗生物質の点眼を行い、定期的なフォローアップが必要です。
- 例:手術後1週間、1ヶ月、3ヶ月のフォローアップ。
白内障の予後
白内障手術の予後は一般的に良好です。以下の点に注意する必要があります:
- 視力の回復:手術後、ほとんどの患者が視力を回復します。
- 例:70歳の女性が手術後、視力が大幅に改善し、日常生活が楽になりました。
- 術後の合併症:稀に合併症が発生することがありますが、適切なケアで管理可能です。
- 感染:抗生物質の点眼で予防します。
- 眼圧上昇:眼圧をモニタリングし、必要に応じて治療を行います。
- 二次白内障:手術後に後発白内障が発生することがありますが、レーザー治療で簡単に対応できます。
- 例:術後1年経過した患者が再び視力低下を感じ、レーザー治療で改善しました。
予防法
白内障の予防には、以下の対策が効果的です:
- 紫外線を避ける:サングラスや帽子を使って目を保護する。
- 定期的な健康診断:早期発見と治療のために眼科の定期検査を受ける。
- 適切な栄養摂取:抗酸化物質が豊富な食材を取り入れる。例えば、果物や野菜、魚介類など。
- 禁煙:喫煙は白内障のリスクを高めるため、禁煙が推奨されます。
- 血糖値の管理:糖尿病の予防と管理が重要です。
猫に白内障が少ない理由
猫も白内障になることがありますが、他の動物に比べて発症頻度が低いです。その理由は完全には解明されていませんが、以下のような要因が考えられます:
- 遺伝的要因:猫種によって白内障の発症率が異なることがあります。例えば、ヒマラヤンやペルシャなどはリスクが高いと言われています。
- 環境要因:猫は一般的に屋内で飼われることが多く、紫外線への曝露が少ないため、白内障のリスクが低い可能性があります。
東洋医学、鍼灸治療からひと言
肝は、目に開きゅうすると言い、東洋医学、鍼灸治療では、目と肝経絡は密接に関係していると考えます。
肝経絡は、自律神経の調節、血液循環の調節、免疫能などの生理機能の働きを司ります。
まずは、肝経絡=肝臓ではないのですが、現代人の私たちには、肝臓の働きと考えた方がしっかりいくかもしれません。
ですから、目の病気を考えるときに肝臓の働きを労わることは大切かもしれません。
また肝経絡と脾経絡(胃腸)との連携を大切に考えますので、胃腸にやさしい生活も重要と考えます。
西洋医学的には、白内障は、避けられない疾患の一つと考えられていますし、実際に手術でほとんどの方は良い結果になりますので、そこまでも怖がらなくてもよいかもしれません。
しかし、身体を全体的にとらえ、それぞれの繋がりや循環を大切にする東洋医学、鍼灸治療です。
東洋医学、鍼灸治療の観点から考えると、白内障を目だけの疾患と考えずに、身体全体を表していると考えて生活習慣を見直すのがおすすめです。